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王妃の寝室を温めた床下の火と煙の迷路

建築の工夫歴史建築王宮

極寒の冬でも王妃が薄着で過ごせた理由。炎と煙を床下に這わせて部屋を温める「オンドル」の知恵と、裏庭に美しい装飾塔として隠された煙突の巧妙な仕掛けです。

トランスクリプト

冬の木造建築って、底冷えしますよね。風が通るつくりは夏には心地いいけれど、寒さの季節には、建物そのものが冷たくなっていく。

ところが同じ冬、ソウルの景福宮では、まったく違う光景がありました。外が吹雪でも、朝鮮王朝の王妃は、寝室の中を薄着のまま歩けた。なぜか。足元から、じんわりと熱が上がってくるからです。

韓国の伝統的な床暖房、「オンドル」。ただ、これを農家の小さな家ではなく、王妃が暮らす巨大な木造宮殿、交泰殿で動かすとなると、急に厄介な矛盾が出てきます。

床を温めるには、当然、大量の薪を燃やさないといけない。つまり、燃えやすくて、しかも清浄であるべき寝室のすぐ近くに、火と煙の発生源が必要になってしまう。一酸化炭素の危険もあるし、灰が舞うのも論外です。

そこで当時の建築家たちは、熱源である「火」と、暮らす空間を切り離しました。煙は本来、上にのぼるものです。でも彼らは、火と煙を床下に閉じ込めて、水平に走らせることにしたんです。

寝室の床下には、煙の通り道になる迷路のような空間が作られ、その上に「クドゥルジャン」という石が敷き詰められました。火元に近い石は分厚く、遠ざかるにつれて少しずつ薄くする。そうすると、熱の配り方が整って、床の温度が均一になる。

その上は、粘土で隙間をふさぎ、さらに紙や油などで仕上げていくのが一般的だといわれます。いずれにせよ、床の表面は人が座り、眠り、素足で歩ける場所として、美しく整えられていた。

でも、床下を這って熱を配り終えた煙は、最後にどこかへ逃がしてやらないといけません。横向きに煙を引っ張るには、しっかりとした煙突が必要です。だからといって、王妃の建物のすぐ裏に無骨な煙突を立てるわけにもいかない。

そこで、復元された景福宮の「いまの景色」の裏側に、もう一つの仕掛けが隠れています。交泰殿の裏庭には、段々畑のように土が盛られた庭園があり、その中に、レンガでできた背の低い塔がいくつも立っています。小さな瓦屋根までのっていて、ぱっと見は装飾のようです。

でも、あれが煙突なんです。

床下の迷路を抜け、建物から離れて土の下を通った煙が、最後にあの塔へつながっている。塔の表面には、縁起物の動物や植物と一緒に、火除けの意味を持つ想像上の獣も彫られていて、危険な排気口を「安全なもの」に見せる工夫まで重ねられていました。

外は雪。室内は、床から静かな熱。見えるのは、庭の小さな屋根の先から、白い煙がふわりと立って、冬の空に吸い込まれていく、その姿だけなんです。

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