ディープダイブ

川を持たない巨大火山が隠す水の行方

水資源地質自然の驚異島の暮らし

雨が降っても川ができないハルラ山。水は地下深くへ吸い込まれ、長い時間をかけて海岸線の泉へと湧き出します。島の暮らしと歴史を決定づけた、見えない水脈の物語です。

トランスクリプト

ここは韓国で雨が多い場所のひとつなんですが、足元には水がひとしずくも見当たりません。ちょっと不思議ですよね。

チェジュ島の中心にそびえるハルラ山。標高2000メートル近いこの巨大な山には、普通ならあるはずのものがないんです。谷を激しく下る川も、せせらぎもありません。

巨大な岩が転がる幅の広い川底があっても、そこはほとんどの季節、からっぽです。地元の人たちが「乾いた川」と呼ぶその場所に水が走るのは、台風が直撃したときみたいな、ほんの短い時間だけ。雨がやんだ瞬間、水はまた、まるで魔法のように消えてしまいます。

じゃあ、その大量の雨水はどこへ行くのか。実は、下へ、ただひたすら下へと落ちていくんです。

穴だらけの玄武岩や、「ソンイ」と呼ばれる多孔質の火山岩を通り抜けて、水は島の底へと飲み込まれていきます。でも永遠に落ち続けるわけじゃない。地下深くには、この火山が海から顔を出す前に横たわっていた、水を通しにくい古い層が広がっている。そこにぶつかった水は、今度はゆっくり横へ、島の縁へと向かって進み始めます。研究では、この旅に十数年から、場所によってはもっと長い時間がかかるとも言われています。

そしてついに、水が吹き出します。

海岸線。地下の水が、岩の隙間から勢いよく湧き上がる。「ヨンチョンス」——龍の泉と呼ばれる湧き水です。波が打ち寄せるすぐそばで、時には海中の浅瀬から直接、凍りつくように冷たい真水がボコボコと湧き出している。南の海岸にあるジョンバン滝なんて、地下を旅してきた水が、崖から直接、しょっぱい海へとダイブしています。

山が人間を「時間」で追い返す場所だとしたら、ここでは山が「水」で住む場所を決める。チェジュの暮らしは、その仕組みに縛られてきました。

山が水を飲み込んでしまうため、中腹の斜面には長く人が住めませんでした。村を作るには、水が湧き出す海沿いにしがみつくしかなかったんです。少しでも内陸に住むとなれば、海まで下りて、あの乾ききった岩だらけの斜面を、真水を背負って登らなければなりません。

本土のように頭に瓶を乗せるなんて無理です。チェジュの凶暴な風と険しい道では、すぐに転げ落ちてしまいますから。そこで女性たちは、「ムルホボク」という、口が極端に狭い独特の形をした水瓶を竹かごに入れ、背中に背負って運びました。雨の多い島で、水を運ぶために汗を流す。ひどい皮肉です。

一方でこの泉は、海に潜る海女たちの命綱でもありました。冬の海で何時間も素潜りをした後、彼女たちは真っ先にこの湧き水に飛び込み、肌についた塩を洗い流し、その冷たい水をゴクゴクと飲み干したんです。

そして、この山の「乾き」は、悲劇の舞台にもなりました。

1948年に起きたチェジュ4.3事件。軍から逃れるため、何千人もの島民がハルラ山の中腹へと逃げ込みました。でも、そこには食べ物がない。高度が上がるほど気温は落ち、冬の山頂付近では零下まで下がります。持ち込めた食料はわずかで、山菜や木の実をかき集めながら、凍える夜を過ごすしかなかった。身を隠したのは、かつて溶岩が流れ抜けてできたひんやりとした洞窟の中でしたが、岩の上に藁を敷いても、体の熱は底なしに奪われていきます。それでも下山すれば死が待っている。だから人々は、山の寒さに耐えながら、息をひそめ続けた。山の水脈が、人々の生と死の境界線を引いていました。

今、韓国のコンビニに入ると、一番よく目にするミネラルウォーターは「サムダス」というチェジュ島の水です。ボトルのラベルには手つかずの美しい自然が描かれていますが、あれが本当に売っているのは——この島の地下で眠った時間です。

巨大なパイプが玄武岩の奥深くまで打ち込まれ、海岸にたどり着く前の地下水を吸い上げています。ハルラ山の頂上に降った雨は、今も変わらず暗闇へと沈み込みます。ただ、岩の隙間から湧き出して誰かの喉を潤す代わりに、鋼鉄の管に吸い込まれ、プラスチックのボトルに詰められて、遠くの明るい冷蔵庫へと運ばれていく。

それでも、この山を見上げると、相変わらず水気のない、ただただ乾いた岩肌が広がっているんです。

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