ねえ、山登りの後って、普通どうする?
日本だったら、とりあえずお風呂に入って、静かにほどけていく感じがあるよね。でも北漢山のふもとで見たのは、そういう鎮静じゃなかった。リラックスというより、爆発だった。
登山口に下りてきて、平らなアスファルトを踏んだ瞬間、ネオンが光るテント張りの食堂街に一気に飲み込まれる。そこら中から、ごま油が焦げる匂いと、発酵の甘さ、それから豚の脂の強い香りが押し寄せてくる。
これが、トィプルイ(뒤풀이)——打ち上げ。あのワイヤー区間を越えてきた体が、ここで一気に報酬を取りにいく。登山は前菜で、ここが本番、みたいな顔をみんながしてるんだよね。
食堂を覗くと、誰も着替えてない。カラフルで高価な最新ウェアのまま、フロントジッパーだけを開けて、安いプラスチックのテーブルを囲んでいる。あるいは、オンドルで熱くなった床にあぐらをかいて、汗だくのまま笑ってる。
で、最初にドンッと置かれるのはお水じゃない。加熱殺菌されていない生マッコリ。酵母が生きていて、口の中でしゅわっとする。底に沈んだ澱をボトルごと豪快に振って混ぜたら、グラスじゃなくて「ヤンウンサバル」っていう、へこんだ金属のボウルになみなみ注ぐんだ。手に持つと、金属がひやっと冷たい。
そこへ運ばれてくるのが、海鮮パジョン。イカやエビが入った分厚いネギチヂミで、油の量が多くて揚げ物に近い。縁はガラスみたいにパリパリで、真ん中は少しトロッとしている。これをナイフで切ったりしない。鉄の箸を2膳使って、みんなでビリビリ引き裂く。動作が乱暴で、だから余計においしそうに見えるんだよね。
脇には、トトリムク——どんぐりの寒天みたいなゼリーが添えられている。醤油と唐辛子とニンニクで和えてあって、少し渋い。その渋みを噛んでいると、さっきまでの森の気配を、胃袋の中で確かめてるみたいな気分になる。
音もすごい。山岳会みたいなハイキングクラブの団体が入っていると、誰かが立ち上がって乾杯の音頭をとる。合図に合わせて、金属のボウルがガチャン!とぶつかって、乳白色の酒が一気に減っていく。静かに癒やすんじゃなくて、仲間と一緒に、騒いで、笑って、体ごと週末を使い切る。
たぶん北漢山は、都市の圧力の逃がし弁なんだと思う。すりむいた膝と燃える肺を山に差し出して、その引き換えに、油まみれのチヂミを引き裂き、冷たいマッコリをボウルで受け取る権利を手に入れる。見ず知らずだった人たちと金属の音を鳴らし合って、日曜の午後を、遠くまで響かせるんだ。
