済州島に着くと、まず目に入るのが黒い玄武岩の塀と、鋭く立ち上がる藁ぶきの屋根なんです。
屋根の勾配が急で、棟には縄が幾重にも渡してあって、たまにその縄の上に小さな石が載っているって感じ。
塀はモルタルでびっしり固められておらず、ところどころに小さな隙間があって、風がそのまま抜けていくんですよね。実はこれは偶然の造形ではありません。
済州の住まいは「風優先」の設計になっているんです。台風が海から横に来る場所では、壁を完全に塞いでしまうと風圧が一気にかかってしまう。隙間を持たせると、風が抜けて圧力のピークが下がる。だから石塀は乾いたまま積んで、隙間を残すわけです。
藁ぶき屋根も同じ理屈です。藁は束ねて縄で強く締め、その縄を棟で引っ張って全体を押さえる。石を載せるのは重量で剥がれを防ぐためで、引っ張る力で屋根材が飛ばされにくくするんですね。玄武岩は角が噛み合うので、モルタルを使わなくても安定しやすい。材料の性質と台風の力学を同時に使った解決なんですよ。
面白いのは、これは美学よりも壊れにくさを優先した設計だということです。木が少ない島で、大きな梁を使う代わりに縄で締める工夫が広がった。壊れたら直す前提で作るから、修理が簡単な作りになる。生活のリズムにもその考え方が染みついているんです。
日本だと茅葺が雪を受け流すための設計になる場所が多いですが、済州では雪ではなく「横から吹き付ける強い海風」を最初に考えている点が違いますよね。
この読み方は移動先でも役に立ちます。例えば牛島の海沿いを歩くと、低い小屋が縄で押さえられているのが見えます。
風が道を走るように抜けて、石塀の隙間が効いているのが分かるんですよね。
屋根の角度、棟の縄、塀の隙間—これで済州の設計が「風優先」だと読み取れます。
見たまま、そういう島なんですよ。
海と台風と暮らすための建て方なんでしょう。
