韓国でフライドチキンを頼むと、まず目に入るのは真っ赤で艶々のヤンニョムと、隣に置かれたキンキンに冷えたビールの組み合わせなんですよね。
噛むと最初に来るのはパリッという音。次の瞬間、甘辛いソースが衣といっしょに口の中で引っ付いてくる。手にベタッと残る。そういう感覚です、って感じ。
実はここで働いているのは調理の「仕組み」なんです。韓国のヤンニョムチキンはだいたいダブルフライで作られていて、一度目は中温で中まで火を通し、二度目は高温で表面の水分を飛ばします。結果、衣が極端に乾いて細かく割れやすい固い層になるんですね。そこに水あめやシロップを多く使った粘度の高いヤンニョムを絡めると、ソースがぴったり貼りつく。ベタつくけど、衣はベチャッとならないんですよ。
だからこそソースが許されるわけです。ヤンニョムは甘みと油分が強めで、味も濃い。そこで出てくるのが氷のように冷えたラガーで、シュワッと炭酸が口を洗い流す。冷たさと泡が甘さと油を「切る」んです、っていうか機能として作られているんですよ。
対照的に、日本の焼き鳥や唐揚げは表面が露出して香りが立つように作られることが多いです。焼きは一回で火入れをして皮や肉の香ばしさを残す。塩やタレの繊細さを楽しむので、酒も室温に近いものや、冷えすぎないビールが多かったりします。料理が「見せたいところ」を残している、そんな違いなんですね。
大事なのは、味の組み合わせが「偶然」ではなく技術から逆算されている点です。揚げ方が衣の状態を決め、その衣が許すソースの濃度を決め、そのソースに合う飲み物の温度や種類まで決まってしまう。チェーン店の看板に大きく書かれた『양념/후라이드』の区別や、店先に詰まれた冷えた缶ビールが、いきなりデザインの一部に見えてくるんですよね。
そういえば、ホフや街のチキン屋の景色を見ればわかります。入り口横に冷蔵ケースがあって、氷を張ったビール缶が並んでいる。店内のテーブルにはジョッキと使い捨ての手袋、そして大きな箱に入ったチキン。あの並び方が語っているのは、料理と飲み物がセットで設計されているということです、ちなみに。
結局、揚げ方がソースの濃度と飲み物の冷たさまで決めているんです。
目の前の一皿が、技術の設計図みたいになっているんですよ。
それに気づくと、街のチキン屋の冷蔵ケースやメニューの大きな文字が違って見えるでしょう。
日本の焼き鳥や唐揚げの、露出した表面をじっくり味わう文化とは、やっぱり違うんですね。
技術がドリンクまで決めてしまう、そういう設計なんだなって感じ。
